雑文集

遊動民の日記。東京→札幌→博多→岡山→東京(イマココ)

多芸で生きるルネッサンス風なんでも屋のすすめ【読書感想文】

 

 

さてさて。

今日は「考える」ということについて。

読んだのはこの本です。

 

「思考のレッスン 発想の原点はどこにあるのか」

 

竹内薫さん、茂木健一郎さんの共著です。

(ほぼ竹内さんの執筆で、茂木さんは後半の対談の章で出てきます)

 

                  

 

この本は、日本とアメリカ、理系と文系、宗教と科学、、、と、相反する文化や学問、考え方を横断してきた竹内薫さんの「ルネッサンスなんでも屋のすすめ」です。

ルネッサンス風というのは、ルネッサンス期の人々のようにあらゆるものに興味を抱いて生きる、万能型、クロスオーバー型の生き方のことを言っています。

 

つまり、一芸に秀でてスポーツや音楽、学問のトッププロになれたらいいけど、それはごくわずかな人しかなれないよね、だから我々はいろんなことに手を出して多芸で生き残っていこうよ、という内容なわけです。

 

第一章、第二章は竹内さんご自身の経験について書かれています。

 

日本からアメリカへ渡ってゼロから英語を勉強したこと。

日本に戻ってきてから苦労したこと、アメリカとの文化の違い、

大学受験、文系理系の壁、数学者と物理学者の考え方の違い、宗教と科学の対立など。

 

竹内さんは帰国子女であり、作家兼科学ライターであり、カトリック教徒でもある。

文化も学問も考え方も、相反するものを経験されているんだよね。

だから一辺倒の考え方にならなかった、と。

 

主題とは少し違うけど、わたしが面白いと思ったのは数学者と物理学者の話。

文系のわたしからしたら両者は同じに見えてしまうんだけど、真逆らしい。

 

物理学者は現実世界から数字が浮かび上がってくる。

猫がジャンプしたとか、フィギアスケートの選手の体の伸び縮みとスピン速度の関係とか。

まず現象、そして数字というボトムアップ的考え方。

 

でも数学者は、現実世界とは関係なく、数学の世界だけで話がすすむ。

まず定義。定義はそう定義されたものとして扱うほかない。そして論理を使って証明がされて、定理が出てくる。定理の証明のために補題がある。

それだけ。めちゃくちゃ抽象的だと。

現実世界に数学を落としてもいいんだけど、それは応用数学、になると。

数学はトップダウン式に抽象世界の構築から始めて、現実世界につなげるときは「応用」扱いなんだね。

 

高校の数学で出てくるx、y、n、あそこらへんも、難しくなると数字を代入しないまま数式を解くための記号となってくるじゃない?

現実世界から離れて、数学のための数学にどんどんなっていく。抽象化されていく。

 

竹内さんはこのことを「アウフヘーベン〈テーゼ、アンチテーゼという対立がなくなって別の次元に上がること〉されている」と表現していて、面白いなと思った。

現実世界から切り離されない物理屋さんはこの抽象化が怖いらしい。ふーむ成る程。

 

第三章、第四章は発想する、考えるということについて。

日本とアメリカ、数学と物理、宗教と科学、これらの壁を乗り越えてものを発想する、考えるにはどうしたらいいかというのが次に続きます。

 

まずは定量的に考えるクセをつけること。

原発は怖い、反対!ではただの感情論だから、じゃあなくすためにはどうしたらいいのか?

まずはエネルギーの使用状況を知ること、代替案としてよく出る風力発電のコストや必要面積を数字で知ること。

そこでやっと現実世界にあてはめて考えることができる。

数字で、具体的にするというのがポイントだね。

 

次に、無知にならないこと。

定量的に考えるには知識が必要。

原発の仕組み、それに付随する経済の仕組み、エネルギー生産の仕組み、いろんなことを知ってやっとからくりが理解できる。

そうするとそのものの見方が変わってくる。

怖いから反対、なんて感情論をやらなくて済むようになるわけだね。

 

そして、論理的思考を訓練すること。

ものごとを数値化、具体化して、知って、からくりを理解して、そしてそれらのピースをひとつひとつはめて論理的にものを考えられるようにすること。

 

そして。やっぱり、考えるには環境を変えろ、いろんなことを経験しろ、

失敗していけ、とのこと。

PDCAをまわしていけ、ってことだよね。

 

文化や学問の壁を乗り越えて幅広い物事の知識や経験を吸収することで、応用力も考える力もつく。

安定したタコ壺式社会の崩壊とともに、こういうルネッサンス的生き方がこれからは大事になってくるよね、ということでした。

 

第四章のあとは茂木さんとの対談に入っていきます。

対談形式はテーマに固執せず流動的に話がつながっていくから読者も乗りやすくていいよね。

いろんな本の話が出てきて、全部読んでみたくなってしまった、、

 

 

まとめとしてざっくり感想。

全編通してすごく易しくて読みやすかった!!というのが第一印象。

 

これ1冊読んだだけでも、数学者や科学者の考え方、定量的ものの見方なんかが自分の中に新しい視点としてストックされました。

 

あとは、やっぱり自分の勉強不足を再認識。

興味のある分野はどんどん勉強して、知識を増やしていって、いろんなことを考えられるようになりたいね。

 

ここではうまく書けなかったことが山ほどあるので、ぜひぜひ読んでみてね。

易しいのでさくっと2,3時間で読めて、しかも頭にするっと入ってくる良著です。

 

                

 

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ではでは!